「デスストランディング」レビュー 平和な徒歩に難解な小島ワールドを添えて
丸3日人生を棒に振ってクリアした。目は赤くなり、体は白くなったがその価値はあった。
初の完全小島秀夫オリジナルワールドは恐ろしいほど作り込まれ、何もかもが新しかった。だが一言「オススメ」と言うには何か違う。早速レビューといこう。
唯一無二のストーリーはしつこいくらい細かい設定から
この写真を見て欲しい。時雨という現象の起きている場所に発生する逆さ虹なのだが普通の虹と異なる点が、逆さな状態以外にもう一つある。気づけるだろうか?
実は青色が抜けている。無意識に見てれば逆さなことに気を取られ、指摘されても気付きにくい。ではこれは単なるミスなのか?答えはNOだ。ちゃんと設定がある。
デッドマン曰く、青は死の色である。時雨の降っている地域は死の世界との繋がりが強いため、虹の青は死の世界に通過してしまい色が消失するのだそう。じつはこれ、ストーリーのあるシーンを深く理解することができるのでプレイする方は覚えておくと得だ。
他にもしつこいくらい存在するゲーム内で起きる様々な現象の細かい設定、ストーリーで語られなかった物事の裏付達。はっきり言って良い意味で気持ち悪いwこんなに細かい設定がよく一人の頭から出てくるもんだ。だが、このクソ細かい設定達ののおかげでストーリーはより深みを増し、どんな辛い配送も乗り越えられるモチベーションになる。
配達だけじゃない。世界観の理解も遊びの一つ。
世界観が複雑なのでそのストーリーもかなり難解だ。全てクリアした今でも理解できてないことは多い。それにゲーム序盤から割とプレイヤーそっちのけでキャラクター達は話始める。最初からわからない事だらけ。だがどうか、理解することを諦めないで欲しい。理解をすればするほど、努力に応えるようにストーリーの楽しさ、感動は何倍にも膨れ上がっていく。
この世界を理解することは、デスストランディングの遊び方の一つなのだ。
徒歩を強いられる状況に何を見出すか
自動車を解放できた時、これからの配送はストレスフリーに行えるとどこか錯覚してしまった。おそらく今までのオープンワールドの経験からだろう。しかしデスストランディングの世界では自動車は思ったより障害物を乗り越えず、配送先によっては自動車での配送が厳しいため、どんな手を使おうと徒歩を強制されることが多くある。
この不便さを乗り越えることを楽しめるかどうかで、デスストランディングは大きくその評価が分かれる。現につまらないと感じている人達の意見のほとんどがこの徒歩にフラストレーションを感じている旨の意見だった。
もうこればっかりはプレイしてもらうしか判断しようがない。ただ一つ言えるのは、強いられる徒歩にも様々な歩き方があり、決して単調な徒歩を永遠に要求するようなゲームではないことは保証しよう。
いいね!で慈愛の精神が芽生える平和な世界。だがヘッドショットには劣る
デスストランディングのオンラインは革命とまではいかないが、こんなに平和な気持ちになれるオンラインゲームは世界どこを探そうとデスストランディングとオーバーウォッチくらいだろう。
直接は会えない誰かが、自分の置いたガジェットを使い、感謝してくれるかも知れない。誰かに自分の行動が認められる、崇められる。そういった快感が自然とプレイヤーの通り過ぎた道に、思いやりと工夫が詰まった大量のガジェットを設置させるのだ。
デスストランディングのオンラインは新しいプレイヤーへのモチベーションの提供の仕方を見せてくれた。かなり平和なオンラインだ。平和すぎるがゆえに、ヘッドショットの魅力には負ける。
レインボーシックス、モンスターハンター、FF14。誰かと協力し強大な敵を倒す。自分の鍛えたスキルで誰かを叩きのめす。こういったオンラインゲームはスポーツだ。同じオンラインゲームでも、ジャンルがスポーツとデスストランディングとでは大きく異なり、高揚感も前者の方が圧倒的に高い。
デスストランディングには、罵倒する奴も、粉塵を投げない味方も、トールビョーンしかピックしないアホもいない。オンラインとしては理想の地に見えるだろう。だが、勝利に悪魔的な魅力があるからこそ彼らは現れるのだ。だれもが勝利の高揚感に触れたいがために叫びちらし、画面を殴る。彼らの存在はフラストレーションだし、燃えないゴミに捨ててコンクリートで固めて車道にしたいところだが、残念ながら、マナーの悪い奴らがいるってことは、そのオンラインゲームがいかに魅力的であるかの証明だ。斬っても切り離せない。
要するにデスストランディングをオンライン要素目当てにプレイする事はまったくお勧めしない。あくまでオンラインは豪華なおまけだ。しかし、このおまけは非常に魅力的で、体験しないのはもったいない。トロールや罵倒に疲れたら、画面をパンチする前にデスストランディングをプレイしてほしい。
総評
また必ず配送の旅に出かけます。
本作には吹き替えと字幕がある。トロフィーをコンプリートしつつ次は字幕でも楽しむ予定だ。だが、まだまだ改善してほしい部分もこのゲームにあるため、マイナーアップデートまでは二週目は考えていない。
(車やバイクの挙動が岩を乗り越えると明らかにおかしくなったり、ハードでも難易度がやや甘い。実弾の銃の存在意義等)
本作は、唯一無二のオンラインシステムと小島監督お手製最高級クオリティストーリーを楽しめる作品となっている。他にこんな作品はない。良くも悪くも、このゲームはあなたにとって初体験になるだろう。
さぁ!みんなで誰かの未来を落としまくってボロボロにして渡そう!